「ハラスメント」の原因と対策
ハラスメントとは何か?
ハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為を指します。
具体的には、属性や人格に関する言動などによって相手に不快感や不利益を与え、尊厳を傷つけることです。
ハラスメントと名前が付くものは、何十種類もあると言われていますが、日本の法律で規制されているのは次の4つです。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- マタニティーハラスメント(マタハラ)
※父親の場合はパタハラ - 育児や介護に関するハラスメント(ケアハラ)
ハラスメントの法的定義
日本の法律で規制されているのは4つです。1つずつ解説していきます。
パワハラ | セクハラ | マタハラ | ケアハラ |
---|---|---|---|
①~③までの要素すべてを満たすもの | 性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(対価型) 当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(環境型) | 妊娠又は出産に関する制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(制度等の利用への嫌がらせ) | その雇用する労働者に対する制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるもの |
■パワハラの定義は・・・
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
1~3までの要素をすべて満たすものとされています。
厚生労働省によるパワハラの6類型は以下のように定められています。
身体的侵害
目に見えて分かりやすい暴力や傷害のことです。殴る・蹴る・突き飛ばすなどがあります。立ったまま電話営業をさせるようなことも身体的侵害型のパワハラと言えるでしょう。
精神的侵害
脅迫や名誉毀損、侮辱、酷い暴言などの精神的侵害はパワハラの典型例と言えます。結果的に精神障害を患ってしまうようなことも多くあります。
人間関係からの切り離し
無視、隔離、仲間はずれにするなどの行為も、度が過ぎるとパワハラに該当する可能性があります。仕事を教えない、席を隔離する、やっている内容は非常に幼稚です。
過大な要求
業務上明らかに達成不可能なノルマを課すことで、相手の職場環境が害されている場合は、過大な要求としてパワハラに該当する可能性があります。更には、達成できなければ、怒鳴る、殴るなどの他のタイプのパワハラとも併用されます。
過小な要求
一方、程度の低い単調な作業を与え続けることも、これにより相手の職場環境が害されている場合は、パワハラに該当する可能性があります。毎日部長のお世話やお茶汲みしかやらせなかったり、単調な作業を延々とさせることも度が過ぎればパワハラとなるのです。
個の侵害
プライベートな内容に過剰に踏み入ってくる行為も、相手に精神的苦痛を与えたり職場環境を害することがあればパワハラと言えるでしょう。
■セクハラの定義は・・・
対価型と環境型の2つがあります。
対話型
性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの
例えば・・・
- 昇格を約束する対価として、上司が部下に性的な関係を要求する
- 役員が部下に対して、性的な関係を要求したが、拒否されたためにその部下を解雇する。
環境型
当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの
例えば・・・
- 職場の休憩時間中に性的な内容の会話をする
- 事務所内にヌードポスターを掲示している
- 懇親会の際にお酌を強制する
■マタハラの定義は・・・
言動により就業環境が害されるもの(制度等の利用への嫌がらせ)
妊娠したこと、出産したことその他の妊娠又は出産に関する言動により就業環境が害されるものです。
例えば・・・
- 妊娠している女性労働者に退職を促す
- 出産を理由に解雇
- 育児により時短勤務をしている女性労働者に嫌味を言ったりする
■ケアハラの定義は・・・
その雇用する労働者に対する制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるもの
例えば・・・
- 家族の介護が理由で残業ができなかったり、休まなければならなかったりする従業員に対して、人事評価を下げる、介護休暇の取得を阻害する、尊厳を傷つけるなどという行為
- 介護休業は、育児・介護休業法で認められた労働者の権利であり、これを阻害するハラスメント行為は法令違反
ハラスメント防止法の概要
各ハラスメントの防止法の概要は、こちらの表のようになっています。
パワハラ、セクハラ、マタハラ、ケアハラの4つとも、ほぼ同じ構成です。セクハラに関しては追加項目がありますが、それ以外はほぼ共通です。
ハラスメントを起こした企業が負う責任とリスク
- 不法行為責任
会社は、使用する労働者が職務遂行中に第三者に損害を与えた場合、使用者責任として損害賠償責任を負います。(民法715条)
- 債務不履行責任
使用者である事業主は、労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)ため、パワハラが生じた場合、職場環境整備義務および職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合があり得ます。
- 行政責任
パワハラ防止法の成立に伴い、今後は事業所内でパワハラが生じた場合、事業主が行政処分の対象となる可能性があります。
- 信用リスク
その他、事業所内でパワハラが生じ、訴訟などに発展した場合には、取引先などから「コンプライアンス体制が整備されていない未熟な会社」と評価され、最悪の場合には取引が打ち切られる可能性があります。また、「職場環境が劣悪だ」といった評判が立ち、採用活動などに悪影響を及ぼすリスクも生じ得ます。
ハラスメントの発生頻度
厚生労働省が2020年度に実施した「パワハラ実態調査」の結果です。
6,000社の法人、1万人の労働者に調査をしています。
ハラスメント種別にみると、パワハラがもっとも多く、31%の人が過去3年間で経験したと回答しています。3人に1人はパワハラを受けていると認識しているようです。セクハラは10%、社外の顧客等からの著しい迷惑行為が15%となっています
パワハラの具体的な内容
パワハラについて、具体的な内容は何かというと、精神的な攻撃が断トツで多い結果になっています。
精神的な攻撃とは、脅迫、侮辱、酷い暴言などで、業務上必要な指導であっても、相手の受け取り方にとって攻撃だと思われてしまう可能性があります。
パワハラに該当する基準
パワハラに該当するかどうかは明確な線引きがありません。
典型的な事例や、悪質な事例以外は、裁判官によって意見が分かれます。
重要なことは、言動をエスカレートさせないこと。よりよいマネジメントになるように改善していくことです。
ハラスメントの本質
ハラスメントとは何か:一方的な言動
どう対応したらよいか:双方向のコミュニケーションにする
ここまでハラスメントの種類、リスク、発生状況などについてみてきましたが、ここでハラスメントの本質について、押えたいと思います。
ハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為を指しますが、問題の本質は、一方的であるということです。相手から一方的な言動をされると、誰でも不快に感じます。それは、自分が尊重されていないと感じるからです。
一方的な状態が続くと、不快な感情が蓄積されていき、そこに暴言などがあると、「ハラスメントされているのではないか」「いじめられているのではないか」と感じる人が出てきます。
それでも我慢する人は少なくありませんが、我慢の限界を超えれば、トラブルになります。一方的な状況をやめない限り、トラブルの種はくすぶり続けます。
双方向のコミュニケーションづくりの手段
一方的な言動の原因は、性格(価値観の違い)にあります。
エゴグラムという性格診断ツールを使うことで、性格を客観的に認識することができ、双方向のコミュニケーション構築に役立ちます。
組織風土診断のおすすめ(無償)
組織風土を改善するためには、何処にどのような問題があるのかを把握する必要があります。
そのため、弊社では最初に組織風土の診断を行っています。
診断では次のようなことが分かります。
- メンタル不調者や離職のリスク
- 組織の強みと弱み
- ハラスメントをしやすい人、受けやすい人
- 伸びしろのある人、伸び悩みそうな人
- 組織の風通しの良い箇所、悪い箇所
佐藤 大介(株式会社エンディングキャリア 代表取締役)
私たちは「人材紹介」と「組織風土コンサルティング」を通じて、「豊かな仕事人生」をサポートしています。私は就職氷河期に直面し20年前は失業していました。働く場所がない辛さや悲しみを心底味わいました。その後、ご縁に恵まれて幸運にも人生を切り開くことができました。こんどは私がサポートする立場で、企業と求職者の双方の幸せにつながるご縁を提供できるよう誠実に務めてまいります。