なぜ「正しい関わり」が、人を離職へ向かわせるのか

人は、正しいことを言われたから傷つくのではありません。
自分の痛みが置き去りにされたまま、正しさを差し出されたときに傷つくのだと思います。
評価面談の直後、ある女性社員から電話がありました。
「もうだめかもしれないです、私……」
電話口の声は震えていて、涙で言葉になっていませんでした。
面談の内容を振り返ると、決して厳しいものばかりではなく、日々の仕事ぶりや顧客対応、努力や成果を認める言葉もありました。
それでも、彼女には届きませんでした。
おそらく彼女の心に強く残ったのは、複数の肯定的な評価ではなく、自分を否定されたように感じた一文だったのだと思います。
人は、複数の情報を同時に受け取ったとき、すべてを同じ重さで受け止めるわけではありません。
どれだけ肯定的な言葉が並んでいても、たった一つの言葉が心に刺さり、そこから全体の意味が変わってしまうことがあります。
「評価されている」ではなく、
「結局、自分は足りない存在なのだ」
と受け取ってしまう。
その瞬間、こちらが伝えたかった意図と、相手の心に残ったものは大きくずれていきます。
当時の私は、そのことに気づけませんでした。
彼女が何に傷ついたのかを理解しようとしながらも、私はどこかで冷静に整理しようとしていました。
どこに引っかかりがあったのか。
何が一番つらかったのか。
どこが納得できなかったのか。
そして、会社側の意図も説明しました。
しかし、彼女の涙は止まりませんでした。
今振り返ると、私は「正しく理解してもらうこと」に意識が向きすぎていました。
彼女が本当に必要としていたのは、説明ではなかったのだと思います。
まずは、悔しかったこと。
傷ついたこと。
ここまで頑張ってきたのに、報われなかったように感じたこと。
その感情を、そのまま受け止める時間が必要だったのだと思います。
その後しばらくの間、彼女の笑顔は消えました。
私たちの間には、見えない壁ができていました。
表面的には関係が戻ったように見えた時期もありました。
けれど、心の奥に残った痛みは、消えていなかったのかもしれません。
数か月後、彼女は退職しました。
このようなすれ違いは、決して珍しいものではありません。
むしろ、多くの組織で、形を変えながら繰り返し起きているのではないでしょうか。
良かれと思って行った関わりが、結果として人のエネルギーを奪ってしまう。
正しいことを伝えたはずなのに、相手の心を閉ざしてしまう。
そしてそのまま、静かに組織を離れていく。
では、何が起きているのでしょうか。
問題は、「何を伝えたか」だけではありません。
その言葉が、どのような関係性の中で、どのような状態の相手に届いたのか。
ここに目を向ける必要があります。
たとえば、
- 安心して本音を出せる関係性が築かれていたか
- 評価や期待が、日常的にすり合わされていたか
- 一方向の判断ではなく、対話が成立する余白があったか
- その人を、役割や機能としてではなく、一人の人として見ていたか
こうした前提が整っていない状態では、どれだけ言葉を尽くしても、相手には届かないことがあります。
むしろ、正しい言葉であるほど、相手を追い詰めてしまうこともあります。
個人のコミュニケーションの問題として片付けてしまうと、同じことは繰り返されます。
本当に向き合うべきは、言葉の技術だけではありません。
その言葉が届く関係性があるのか。
受け止められる構造が組織の中にあるのか。
そこに目を向けることが、組織の健全性を高める第一歩だと考えています。
組織の中で起きるすれ違いは、目に見えにくいものです。
だからこそ、関係性や構造に丁寧に目を向けることが、本来のパフォーマンスを発揮できる組織づくりにつながります。
エンディングキャリアでは、見えにくい関係性や構造に働きかける組織開発支援を行っています。
組織の中で起きているすれ違いは、目に見えにくく、問題が表面化したときには離職やパフォーマンス低下につながっていることもあります。
そのため、まずは「組織風土診断」を通じて、現在の組織状態を可視化することをおすすめしています。
無料でのご相談やお試し診断も可能です。
組織の関係性や風土に課題を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
