介護施設の心理的安全性が向上したコンサル事例

2024.01.19
水面下で行われているパワハラにどう対処するか

先月まで10ヵ月間ほど、介護施設様の組織変革をご支援させていただきました。
「心理的安全性を高めたい」ニーズをお持ちの企業様のご参考になればと思い、事例をご紹介いたします。

■クライアントの概要
クライアントの介護施設様は、「住宅型有料老人ホーム」と「訪問介護」のサービスを併設。約40名のスタッフで運営されています。

■受注の背景
2年前にハラスメント研修を実施したご縁で、経営トップからお声がけ。彼の見解は、当該施設はマネジメントがうまく機能しておらず、離職が止まらない、パワハラの懸念がある等、問題が山積しているとのこと。施設マネジメントを改善してほしいとの依頼を受けました。

■当社のコンサル視点
①成功するチームの大前提として心理的安全性がなければいけない(Google社の研究調査でも証明)

②離職理由の多くは複合的なものだが、実際には人間関係要因が半数を占めている(転職者1,200人へのインタビュー調査結果)

③パワハラの根本原因は「一方通行のコミュニケーション」の不快さにある。そこを双方向のコミュニケーションに変えることで、パワハラリスクは減少する

■具体的なアプローチ
①組織風土診断を実施。この診断では、組織風土特性、対人関係の特徴、職場で発生しそうな言動を分析。そこから関係性が生み出す成果やトラブルが想定

②施設長を含めた職員15名と1on1面談を実施。上記の診断結果に基づき仮説を提示できるので、本音に近いヒアリングが可能になる

③イシューの特定と真因の明確化。イシューは「大きなトラブルが発生する」とした。理由は、人命をお預かりする介護施設様にとって、大きなトラブルは人命にかかわることで絶対に防止しなければいけないため

④真因に対しての施策提案と優先順位のすり合わせ。20個の真因に対して12個の施策を提案した。施設長に実行したい施策を選んでもらった

⑤施策実行
・全職員対象の行動指針を決めて徹底する。行動指針が必要な理由を明確にし、徹底できた場合のビジョンを共有した。毎月の1o1の中で全職員と振り返りを実施
・施設長を含めた5名の役職者へ1on1のやり方を指導
・当社カウンセラーがスタッフ全員との育成面談を実施し行動変容をサポート

⑥効果検証。人事マネージャー、施設長、職員へのインタビューにて検証

■組織の変化
①報連相が停滞していた組織が、過剰なくらい報連相が行われる組織へと変わった。これまでは問題があっても声が挙がらなかったが、いまでは、利用者の些細な体調変化、業務上の小さな疑問、改善アイデアなどの報連相が著しく増えた。定量的には1日10件程度の報連相が、1日50件程度と5倍に増えた

②介護職員同士が相互に支援し合う関係性が築けた。介護職員の仕事は利用者様を向き合う時間がメインになるので、職員同士のやりとりは頻繁にはない。しかし、一人の利用者をシフトで複数の職員で見るため、引継ぎの精度が介護品質に大きく関わる。利用者目線、受け手目線の配慮がある引継ぎにより、業務がスムーズになり、利用者の満足度も向上した

③施設長のマネジメント姿勢が大きく変わった。以前は本部の評価を気にすることと、責任感の強さからプレッシャーに押しつぶされそうな状態だったが、今回のコンサル支援を通じて「利用者に快適な施設をつくる」ことが、自分が一番実現したいことだと気づいた。その後、施設長は強力にリーダーシップを発揮し始め、組織の変化を加速させた

■最終成果
イシューに掲げていた「大きなトラブルの発生」が、2-3件/月から0件に減った。細やかに報連相が上がってくるので、大きなトラブルに発展しない。

以上、介護施設の心理的安全性が向上した事例を紹介させていただきました。この事例のポイントはいくつかありますが、①当社カウンセラーが一人ひとりの性格に寄り添って指導した点、②職員同士が価値観の違いを認め合い尊重し合えるようになった点、③イシューの原因を分析し真因に対して施策を講じた点が成果を生みだした認識しています。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんの会社の組織づくりのご参考になれば幸いです。

佐藤大介プロフィール画像

佐藤 大介(株式会社エンディングキャリア 代表取締役)

私たちは「人材紹介」と「組織風土コンサルティング」を通じて、「豊かな仕事人生」をサポートしています。私は就職氷河期に直面し20年前は失業していました。働く場所がない辛さや悲しみを心底味わいました。その後、ご縁に恵まれて幸運にも人生を切り開くことができました。こんどは私がサポートする立場で、企業と求職者の双方の幸せにつながるご縁を提供できるよう誠実に務めてまいります。